大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和27(オ)696 判決

主 文

本件上告を破棄する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

原判決は、その挙示する人証により、上告会社の取締役兼営業部長であつたDと

機械器具の販売を業とする被上告会社E出張所勤務の販売係であつたFとの間に代

金八〇万円を似て判示紡織機の売買契約が成立し、Dは、右代金の内金五〇万円を

Fに交付した事実を認定した上、その挙示する諸証によつて認定した判示各事実を

綜合し、Dは、上告会社を代理して、右契約をしたものであるが、Fは、被上告会

社の為にすることを示さず、その代理人としてではなく同人の個人取引として自己

の為に右機械の売渡契約を為し自己の為に内金五〇万円を受頭したものであつて、

Dも亦Fが個人として、自己の為に契約するものであることを、諒承していたこと

を認定したものであり、前示証拠に徴すれば、叙上認定は、これを是認できないわ

けのものでもない。論旨はFが、前示認定のとおり被上告会社の販売係であつた以

上は、同人は商法四三条、四四条に基き被上告会社の機械類の販売に関する一切の

裁判外の行為をする権限を有した筈であり、またFに右代理権がなかつたとしても、

Fの地位は上告会社より見れば、第三者に対して他人(F)に代理権を与えた旨を

表示した場合に該当するが故に、本件取引をFの個人取引であるとにするには特に

格別な事情の立証されることを要するに拘らず、原判決は何らこの特別の事情につ

いて説示するところがない。即ち原判決には、理由不備の違法ありと主張する。し

かしながら、Fが所論のように被上告会社の販売係でありまた所論のような、表見

代理人の地位にあつたからと言つて、F自身の為に被上告会社と個人取引を為し得

ないものではなく、原判決の認定した事実は要するに、本件取引はFが被上告会社

より与えられていた権限や地位とは関係のないF自身の為の個人取引であつた(F

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の行為は民法上も亦商法上も被上告会社の代理行為ではなかつた)というに帰着す

るから原判決には毫も所論の違法がない。

その他の論旨は畢竟原審の裁量に属する事実認定の非難でしかない。

論旨はすべて「最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律」(

昭和二五年五月四日法律一三八号)一号ないし三号のいずれにも該当せず、又同法

にいわゆる「法令の解釈に関する重要な主張を含む」ものと認められない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと

おり判決する。

最高裁判所第一小法廷

裁判長裁判官 下 飯 坂 潤 夫

裁判官 真 野 毅

裁判官 斎 藤 悠 輔

裁判官 入 江 俊 郎

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